お墓を建てるにあたり、参考にしようと墓地をたくさん見て回った。
荒れたお墓が多いことに驚いた。草に覆われた墓や、ひどいのになると石が倒れたまんまになっていたり。これが現実。手間をかけて改葬しても、明日は我が身と思い知った。
せっかくお墓を建てるなら、ちゃんと継承して欲しいし、できれば草ぼうぼうの中に放置なんてことありませんように・・・
先のことはわからない。でも、少なくても息子の代は何とか頑張って欲しい。そのための啓もうは、しっかりやっておこう。
うちのお墓を継ぐ息子たち。私がかつてそうであったように、お墓には全く興味なし。
そんな彼らが『気楽に継げるお墓作り』をなによりがんばった。そのために打った対策あれこれ。
継承問題、息子がキーパーソン
自宅から徒歩圏にお墓を持つ事にした。その時の話↓
お寺で契約を交わす段階になり、住職からこう尋ねられる。
後継者いますか?
後継者?えぇ、息子が・・・
その時、後継者がいないと、お寺にお墓を作れないのだと、そんなことに初めて気が付いた。
重視されるのは、購入する私たちではなく、『管理できる子がいるかどうか』だったとは。いきなりあの世に葬られたかのような・・・
これまで、お墓のことは夫婦間で粛々と話を進めてきた。決まったことを引き継げばいいと思っていた。でも、ちょっと考えを変えた。
彼らがキーパーソンなら、主役の彼らを抜かして事を運ぶわけにはいかない。
継承者を確保
早速彼らを巻き込むことにした。
お墓なんていらなくない?
そこにお金かける意味わかんないし。俺たち要らない
そう言うと思った。お墓田舎に置いといてもいいよ。
ただ、いちいち新幹線に乗るって面倒かも
めんどくせえ。で何すりゃいいの?
管理料を年2万円払ってくれれば助かる
だけ、ね?
しょうがない、やるわ
これで正真正銘、継承者を確保した。
継承しやすいお墓の条件
『息子が気楽に継げる』を目指して、私たちが取り組んだのは、この3つ。
- 親子で価値観を共有する
- 管理が楽(お墓詣りしやすい・お金がかからない)
- 継承に値する墓を作る
価値観の共有
お墓の話は、つまらないと息子にすぐ逃げられる。その袖をつかみ「どう思う?」「どっちがいい?」と。
親と私たちの世代の価値観が違うように、息子と私たちもまた違っていて、ドライさが増すというか・・・
『建之者名(お墓を建てた人の名前を竿石に彫る)』ってどう思う?と聞けば、「それって売名行為でしょ?」。
じゃあ『墓誌(誰がお墓に入っているかと言う名簿の板)』は?「個人情報じゃん」。
何事も一刀両断。
私たち夫婦も十分合理的だけど、さらに歯切れがいい。なるほどなぁと感心したり、そこまで言うかと悲しくなったり・・・
命のバトンタッチをしているような、不思議な気分にもなってくる。これ以上私たちが年取っていたら、リアルすぎて、きっと疲れ果てたに違いない。
管理が楽(お墓参りしやすい)
田舎の墓が、新幹線が必要なほど不便だったから、お参りしやすいことには、とことんこだわった。
そのために改宗も厭わなかった。浄土真宗から曹洞宗に改宗。
- 自宅から徒歩圏
- 遠方に住んでもアクセスが良い
- 足が弱ってもお墓詣りできる
という条件で探し、自宅から徒歩10分。ほぼフラットな墓地を見つけた。
電車もバス便も頻繁にあり、交通の便は問題なし。駐車場も完備。将来、家を出たとしても関東圏なら楽々日帰り可能。
管理が楽(お金がかからない)
《管理料・お布施》
管理料は、ちゃんと払ってくれると了解済み。
お布施についてもほぼ考えなくていいだろう。「必要とする行事がない。大がかりな改修も終わったばかり。何かあっても強制しない」と住職に伺っている。
私たち夫婦は檀家としてできる協力はするつもり。息子の代には彼の考えでやってくれたらいいと。
《戒名は最低ランク》
戒名は、最低ランクでいこうと決めた。
できれば、白洲次郎のように『葬式無用、戒名不用』と言いたいところ。世の習いに逆らうほどの勇気もないし。
義父がなくなった折、「父、こういうの(戒名)好きだったから」と、ランク表を見て逡巡する夫に、息子が言った。「そんなお金あったら、生きてる僕たちのために使った方が、おじいちゃんも嬉しいでしょ」と。
私たちの時も、きっとこんな調子でやられるんだろう・・・
《お墓の工夫》
お墓をすっきりさせたくて墓誌を省いたことが、ダブルで費用削減に。1つは作成する初期費用、もう1つは亡くなる度に墓誌に名前を刻むという、後の費用。
さらに、我が家のように改宗して、戒名がごちゃごちゃでも、人目に触れることもない。ちょっと複雑な人間関係を明記されることもないし。
継承に値するお墓
継承に値するお墓。
私のイメージでは、お墓は家より長く残るものだから、 流行のないシンプルなもの。お墓参りに行って、自分の来し方を誇らしく思えるようなものなら、尚有難い。 間違っても、今風の軽いのはちょっと・・・
青山霊園・雑司ヶ谷霊園・谷中霊園あたりに参考物件を探しに行ってみることにした。
これは雑司ヶ谷霊園の竹久夢二の墓。
私の理想は、こんな感じ。素朴で、暖かくて、シンプルで、チャーミングで・・・
お墓自体も素敵だけど、花が手向けられてこそのお墓。そんなことを感じたのもこのお墓。お参りする人の気配がますます、このお墓を素敵に見せるよう。
とはいえ、結局お墓は譲り受けたので、自分で1から作ってはいない。できるだけ装飾をそぎ落とし、お墓巡りで学んだ余白をとることを、心がけただけ。
シンプルなお墓は掃除も楽だと、今実感している。
まとめ
『子に迷惑をかけない永代供養の墓』この頃チラシでよく見かける言葉。
私は、お墓の管理くらい子がいるなら、やってもらっていいと思っている。やってもらう代わりに、こちらもできることはやっておいてあげようと。これもお互い様。
親子で話し合ってお墓を建てて、今思うのは、「お墓詣りに行きたい、会いたいと息子に思ってもらう親でいなきゃ」ということ。死ぬまで気が抜けないなあと。