建築家に依頼して家を建てました。
選んだ建築家とは相性最悪。
4年もかかり、どうにかこうにか完成した時には「もうこれで会わなくて済む」と思ったほど。
住み始めたころは、聞き入れられなかった要望が頭の中で渦巻いていて、「こんなのうちの家じゃない!」「どれもこれも大失敗だ!」とヤケになっていて・・・
それが、住んで5年経ち、「案外悪くない・・・」と。
私たちは、家に機能だけを求めていました。
収納が多く、使いやすい家を。
フレキシブルな空間が便利だと信じていました。それが、住み心地に繋がると信じて。
今はちょっと違います。家には、機能より優先することがありました。
この家、なんだか目に心地いいんです。それが心に沁み込んで・・・
経年劣化も、またいい味になっています。
ちょっと悔しいけれど、私たちの希望を押し通していたら、この住み心地は得られなかったでしょう。
建築家が建てる家、やっとわかった醍醐味をお伝えします。
建築家と相性最悪、ストレスフルな打ち合わせ
どういうわけか、建築家とは最初っから相性が最悪でした。
建築家、相性よりデザイン優先
「家を建てるなら建築家にお願いしたい!」それだけは決めていました。
ただ、建築家をどう選んでいいのか、全く知識がありません。
最初はネットで調べた、相談所のような所に飛びこみました。
紹介を受け面談、まさにお見合いです。
「決めた!」なんていう出会いもなく、踏ん切りがつかず、ちょっと急ぐ事情もありましたので、新宿にある
リビングデザインセンターOZONE で紹介してもらうことにしました。
家を建てるための情報が沢山あり、アドバイザーもいます。素人には心強い場所です。
半日かけて、ずらっと並んだ建築家ファイルを片っ端からめくり、選びました。こんなに大勢の中から選んだのですから、まずまず納得です。
性格の良し悪しは大切ですよ。この建築家を苦手と言う方もいましたが大丈夫ですか?
大事なのはデザインですから
今思えば大事な忠告でした。コミュニケーションに苦手意識がなかったので、ついスルーしてしまったこと悔やまれます。
ストレスフルな打ち合わせ
初めての打ち合わせの日、何枚も書いた要望書をまったく無視した設計図に面食らいました。
お風呂は2階にして欲しいと要望書に書いたのですが
こんなにたくさん書かれても何が大事か見えてこないし、覚えられない。
要望は1つか2つにしてくれないと困る
もう少し広くなりませんか?
お金かかりますよ。出せるんですか?
収納をもっと作ってほしいのですが・・
収納収納ってね・・
私が有名なシェフだとすると、奥さんが厨房にズカズカ入り込んできて、醤油を足せケチャップを足せって言ってるようなもんですよ
螺旋階段はあまり・・・・
こんな狭い家には、螺旋階段しか無理
どうですか、良い家になりそうですか?
奥さんが口出しさえしなかったらね
毎回こんな風に繰り返される、皮肉なやりとりと攻撃的な物言いに、ワナワナするばかり・・・
夫は「機嫌よく設計してもらわないといい家にならない。感情は抑えろ」と、私の膝を抑えますが、私はちゃんと要望を伝えたい。
夫婦の間にも齟齬が生じました。
完成したのは建築家の作品
「建築家には自分の作品を作ることにこだわる人がいる」という事を知ったのは、家が建ち上がった後のことでした。
芸術家肌の建築家なんて言葉もあるようです。
やっと入居できた当時は、違和感だらけ。
「あれ、掃除できない!」「だから収納にして欲しいと言ったのに」そんな言葉を毎日ブツブツ・・・
螺旋階段には、何度も痛い思いをさせられました。
建築家の家、間取りじゃ見えない心地よさ
それが、いつのころからか「案外悪くない」と。
なんだか落ち着くんです。どこに目をやっても心地いい。作りこまれた空間のなせる業でしょうか・・・・
無垢の木やぬり壁の質感、光の反射の具合も優しいんです。どうやら計算されているようで・・・
私たちは、『天井は高い方が良い、窓は大きい方が良い、空間は広い方が良い』という価値観でいました。
家には、機能と収納があればいい。シンプルイズベストだと。
作り込んだ空間が、こんなに心地が良いものだとは知りませんでした。
間取りを図面で見ただけじゃ、この心地良さはわかりませんでした。
この心地よさは、暮らしやすさとはちょっと違うんです。何と言ったらいいのでしょう。もっと心に近い部分というか・・・・
ブラインドを下ろし照明をつけた夜に、いっそう感じます。
まとめ
「うちも建築家に頼めばよかった」わが家に遊びに来た友人が言います。
高級な家を建てているにも関わらず、一味違うわが家を見て後悔してる様子。確かにハウスメーカーの作る家と、何か違います。
いろいろありましたが、今は建築家にお願いして良かったと思っています。
私たちの思いを超えた家になったから。
(ちなみにハウスメーカーの間取り図を見れば、私ほぼ家を想像できます。)
この空間は、間取り図では見えませんでした。
ハウスメーカーは、優しく要望を聞いてくれました。きっと要望通りの家を作ってくれたはず。でも、それじゃ感動はありません。
私たちの思いを超えたサプライズを提案してくれるのが、建築家だと思います。
時が経つほど、味わいが増し、愛着がわいてきます。
金額面でも、決して高くはありませんでした。自分たちが払える金額まで、仕様を削ればいいんですから。いろんな手立てを講じてくれるのも建築家の仕事です。
とは言え、もし次があるなら、相性のいい建築家にお願いしたいものです・・・