まさか私が服を作るなんて・・・
妹びっくり、母も「やればできるじゃない」とご満悦。
実家に埋蔵されていた私の着物。母が「引き取れ」とせっつくので、「捨ててくれ」とも言えず、しょうがなく引き取ることにした。流石に高齢の母に管理をまかせっきりは申し訳ない。
これぞ無駄使いの最たるもの。見れば、後ろめたさに心が折れる。
「もったいない」の一心で、母に教わり筒形のワンピースを作ってみた。
ビギナーズラックか、これがかなり評判がいい。教える母も、昔取った杵柄、俄かに活気付いてきた。思いがけない一石二鳥。
母のため私のために、しばらくこの路線で着物のリメイクに励んでみようかと思っているところ。
着物処分するつもりだったんだけど
結構着物を持っている。
結婚にあたり、「箪笥の肥やしもいるから」と、祖母の口車に乗せられた母が用意したものに、後から亡き義母の着物も加わった。
箪笥で眠っていれば忘れていたのに、見ればもったいなさに心が痛む。かといって、いつまでも眠らせておくわけにもいかなくなった。
買取価格は一竿3000円
夫の実家を処分するとき、義母の着物を衣装ケースに移し替え、リサイクルショップに持って行ったことがある。
ぎっしり箪笥一竿分。留め袖も訪問着も含まれているというのに、よく見もせずにまとめてたった3000円。これで3000円なら持ち帰った方がましだと、また持って帰ってきた。
まったく思い入れもないけれど、二束三文はないだろう。とりあえず気に入った柄のモノだけ選び取り、実家の箪笥に葬った。
母が着物の管理を放棄した
今回、初めて着物の虫干しを手伝わされた。
たとう紙を広げて、1枚1枚着物ハンガーにかけ、風を通して、また畳んでしまう。これを丸2日午前午後ととっかえひっかえ。これでも私のものだけ。まだ、母のや妹のもあるわけで・・・
これじゃ、持ち帰れと言いたくもなる。
もう絶対着ないのに、こんな手間をかけるのは無駄。「そもそもこんなものを誂えた母が悪い」と言えば「適当に処分して」と返してくる。買った当時の金額を知ってるから、私だって捨てられない。その上、母の私への思いも込められているわけで、よけい捨てられるわけがない。
そういえば、母が大島の紬でスプリングコートを作ったっけ。
布が良いのでそれだけで上品な感じがする。悪くはない。でも、一歩間違えば、いかにも着物がもったいないからリメイクしましたって感じになりそうで・・・さじ加減が難しそう。
私はまだいいや。とその頃は思っていた。
着物のリメイク
着物のリメイクどころか、洋服を作ったこともない私。もったいないと思う気持ちが、リメイクに走らせた。
始めて作ったのは、息子曰く『縄文人の貫頭衣』みたいな筒形ワンピース。が、これが結構評判がよく。「これ浴衣?」と何人も声をかけられた。案外才能あるかも・・・
「早く作らないと夏が終わるよ!」と母に焦らされ、更に絞りの浴衣でもう一枚。これは布を継いだ部分がひきつっている?母曰く「ずっと動いていたらわからない」と。マグロのように動けと言うことか・・・
ウナギの寝床のもんぺが良い感じ
着物で洋服を作ってみたいと思ったのには、伏線がある。
うなぎの寝床というお店の「ファーマーズMONPE」というのが痛く気に入っている。夫も真似して、「現代風MONPE」を買った。
これは久留米絣でできていて、通気性が良くて真夏も涼しくて、着心地抜群。
久留米絣って着物地でしょ?だったら、着物をリメイクしたらできるんじゃないか?型紙も販売しているくらいだし。
残念ながら、私の欲しいファーマーズMONPEの型紙はない。でも、店の人が「実物があるんだから、自分で型紙作れますよ」と気軽に言う。きっと簡単なんだろう。
そんなことがあって、東寺の弘法市で、はいてるモンペを指さして、紬を2枚買ってきた。1枚たった500円。もっと買おうとしたら、「作ったことないんでしょ?一度作ってからにしたら?」とお店のお姉さんに止められた。
やはり、買っただけで熱が冷めた。
着たい服がない
近頃、何を着たらいいのかわからないでいた。年齢的に変わり目にいるんだと思う。
ただの白いTシャツは貧相に見える。かといってゴテゴテしたものは苦手。そんなわけで、何も買えずに、ずっと同じものを着ていた。洗濯を繰り返してハゲハゲになっても、捨てられない状況が続いていていた。
さすがにまずい。だったらあのモンペでも作ってみようか。
母に相談してみたら、「まず浴衣で練習したら?せっかく買った布で失敗したらイヤでしょ」と。
確かに。学生の時に作ったこの浴衣だったら切り刻んでも後悔はない。とりあえず、お気に入りのワンピースの型紙を起こしてもらった。
ビギナーズラックとはこのことだろう。
我ながらかなり上手くできた。作っている最中は、ミシンの糸調子が悪かったり、しわになったり、ひっくり返そうとしたら縫い留められていたり、何度も何度も解いたり縫ったりの繰り返しだったのだけど、結果オーライ。
浴衣地の華やかさが、今の私の貧相な部分を補ってくれ、元のワンピースよりずっといい。
着物のリメイク、ありかも。
シンプルなデザインほど、着物地が映える。捨てるしかないはずだった着物が蘇る。作るのに丸1日半かかったけれど。時間はだけはたっぷりある。
母が元気になった
そして意外な効果は、母が元気になったこと。
洋裁を習い、ずーっと私たちの服を作り続けてくれた母。ここのところ体調も悪く、「この頃とぼけてない?」と妹とも心配していたほど。
それが、昔取った杵柄とはこのこと。私への洋裁指導に熱が入り、「昨夜考えたんだけど・・」と朝一に電話をかけてくる。
夫も、「お母さん、声弾んでる」と。この際だから、これから帰省の度に、洋裁を習おうと思っている。そうして、着物を全部リメイクしようとたくらんでいる。
まとめ
これぞ、実利付き親孝行。
昔のように、「これがいい!」といった服を、母に型紙を起こしてもらい、私が作る。途中で熱血指導が入るに違いない。そんな風に老いた母娘の時間を豊かに楽しく過ごしたいと、願っている。