5月に仕込んだ「かんたん漬け」。
蓋を開けたらシュワシュワと立ち上る泡・・・
4年目にして初めて失敗。しかも「かんたん漬け」で。
でも「やっぱりなあ~」と思いました。
らっきょう漬けのレシピって、人によって結構違います。ホントに、てんでばらばら。
一つに絞ればいいものを、美味しく作りたい一心で、あっちこっちのレシピをつまんでいたら、自分でも訳が分からなくなってしまって。
これを機会に、らっきょう漬けの基本をちゃんと知りたい、と思いました。
わかったことは、一見違って見える漬け方も、腐敗を防いでうまみを出すという基本の部分では同じだということ。一つ一つの工程に、ちゃんと理由があるということ。
そんな私の発見を記します。
「そういうことか!」と納得すれば、失敗は避けられます。基本がわると応用も利きます。自分なりの漬け方を見つけてみてください。
らっきょう漬けレシピが多すぎる
毎年、試行錯誤しながら2~3種類漬けてきました。
どれも出来上がりに違いがなさそうなので、それなら一番簡単な「かんたん漬け」でいいじゃないかと思った矢先の失敗でした。
らっきょう漬けは、漬物の中では簡単と言われるようです。私にはとてもそう思えない。
人によってレシピに違いがありすぎて、どれを信用したらいいのか・・・
「そんなの適当でいいじゃないか」と思われるかもしれません。その微妙だったり、大きかったりする違いが、私には気になって気になって、先に進めなくなるんです。
かといって、有名な辰巳房子さんのレシピなら良いかと言えば、ちょっと作業が複雑で、これまたやる気が出ない。
私にとっては、より簡単にも大事です。
4年前に教えてもらった母の漬け方は、ずいぶん古いスーパーのチラシに掲載されたもの。
もっと立派な漬け方があるのでは?と、料理本を引っ張り出したところから、迷走が始まりました。
図書館でネットでと、調べるほどに悩みは深まるばかり。
どんなやり方でも上手くいくのかもしれません。でも、ますます基本が知りたくなりました。
らっきょう漬けの考察
ます分類から。
らっきょうの漬け方は、塩漬けするかしないかで大きく2つに分かれます。
- 本漬け(塩漬けあり)
- かんたん漬け(塩漬けなし)
問題はここからのバリエーションの広さ。
工程ごとに2~5種類書き出してみました。これはほんの一例。これだけでも、全工程通せばかなりの種類になります。
A 塩漬け方法〈かんたん漬けは省く〉
- 漬ける材料 (塩だけ・塩水・熱い塩水)の違い
- 根と茎を切る時期 (塩漬け前・塩漬け後・塩漬け塩出し後)の違い
- 塩漬け液の配合の違い
- 塩漬け期間 (1時間~4週間)の違い
- 塩出しのやり方 (流水・ため水)の違い
B 本漬け前の熱湯処理方法
- 熱湯にくぐらせる
- なにもしない
- 70℃の甘酢で5~8分煮る
C 甘酢の作り方
- 一煮立ちさせて冷ます
- 暑いまま注ぐ
- 混ぜるだけ
D 保存方法
- 冷蔵庫
- 冷暗所
A 塩漬け方法の違い
塩漬け方法以前に、塩漬けに価値があるのか気になりました。
メリット | 腐敗しにくく長期保存可能 乳酸発酵により、うまみが増す アクが抜け、辛味が抑えられる |
デメリット | 時間がかかる 発酵中の匂いがきつい |
確かに塩漬けなしは、レシピに冷蔵庫保存と書かれていることが多いようです。
長期保存・常温保存のためには、塩漬けは必須。
3.塩漬け液の配合
漬け方 | A | B | 母 | D | E |
らっきょう処理後g | 1000 | 800 | 1000 | 1000 | 1000 |
水 | 700 | 700 | 200 | 300 | 700 |
酢 | 180 | 100 | |||
塩 | 150 | 90 | 100 | 100 | 100 |
塩分濃度% ※ | 7.5 | 4.8 | 6.7 | 6.7 | 5.3 |
※食塩重量=食材重量×食塩割合÷(100-食塩割合)で計算しました。
参考に5つのレシピをとりあげます。AとEの配合をよく見ました。
ちなみにAがJA鳥取(らっきょうの袋に書いてる配分)で、Dが神奈川農業技術センターHP。後は個人。
塩分が10%あれば大多数の腐敗菌の繁殖が抑えられます。5~6%に減塩した場合は、酢などを補う必要があります。
塩分も多ければよいものでもなく、その分乳酸発酵が遅れます。
各々の配合は違っても、『腐敗を防ぎ乳酸発酵を促す塩分濃度』になることが大切。(Eはなっていません)
AやDの母体のしっかりした団体が7.5や6.7%であることを考えると、そのくらいを目安にすれば安心です。
※ 後で塩抜きしますから多めでも大丈夫です。
1.漬ける材料(塩だけ・塩水・熱い塩水)
塩だけの場合、空気に触れて雑菌が繁殖しないよう、また均一に塩分を浸透させるよう、保存瓶を揺する手間がかかります。
熱い塩水だと乳酸発酵は期待できません。
2.根と茎を切る時期(塩漬け前・塩漬け後・塩漬け塩出し後)
らっきょうは強靭で、塩が浸透するまでにも成長を続け、先に切っても切り口が揃わない。また、水分が入り込むリスクを減らすため、切るのは後ほど良い。
4.塩漬け期間(1時間~4週間)
2~4週間で乳酸発酵が終了し泡が出なくなるそうです。良い発酵ならいいのですが、腐敗しても困るので安全を優先します。
5.塩出しのやり方(流水・ため水)
これまでため水で問題ないので、敢えて流水にしなくてもいいんじゃないかと。
B 熱湯につけるかどうか
熱湯につける目的は、殺菌・歯ざわり・水切り対策のようです。確かに熱湯につけるようにして、歯触りが良くなったと実感します。
ただ、乳酸菌は熱湯だと死んでしまいます。
死んだ菌でもそれなりに働きがあるともいわれますが、乳酸菌のためには70℃5~8分煮るという方法を選ぶべきかもしれません。
菌の事は奥が深いので、ひとまず安全第一とします。
C 甘酢の作り方
熱いまま注ぐと、歯ごたえのあるらっきょうになりました(かんたん漬け)。
甘酢をただ混ぜただけでは死滅しない菌がいるので、加熱したほうが安心。
とは言え、既にらっきょうを熱湯につけている場合は、甘酢まで熱いまま注ぐ必要はありません。
D 保存方法
私が保存食に求めるものは、常温長期保存一択。
らっきょう漬け、これが基本形
基本形:らっきょうの漬け方
処理なしらっきょう | 1000g |
水 | 700g |
塩 | 140g |
塩分濃度 | 7.1% |
- 1洗う
らっきょう1Kgに水を加え、こすり洗いをして泥を落とす
株がつながっているものは外す - 2下漬け
塩をまぶす(140g)
水を加える(700g)
浮かないよう軽い重しをして2週間涼しい場所で保存
- 1塩抜き
時々水を替えながら、ため水で塩出し(半日~1日)
好みの塩加減になったらザルにあげ水切り - 2茎・ひげ根をとり、薄皮をむく
- 3熱湯に10秒くぐらせる
ザルにあげ、水けをきって冷ます
- 4甘酢の材料を一煮立ちさせ冷まし、赤唐辛子を加える
- 5瓶に入れ保存
消毒した保存瓶に丁寧に水分を取ったらっきょうを入れ、冷ました甘酢を注ぐ
- 6冷暗所で保存
参考までに、わが家の甘酢の比率です。砂糖50g:米酢2cup:唐辛子 1本。究極の甘さ控えめ。
まとめ
らっきょう漬け、調べて比べてわかったことは、らっきょう漬けも保存食だったという当たり前のことでした。
保存のために塩蔵して水分を抜き、その間にうま味が出る。
ホントに漬け物なんです。
失敗したからこそ、その基本に立ち返ることができました。
私が作りたいのは保存食としてのらっきょう漬け。常温保存できる昔ながらの・・・
もう、次から迷わず作れます。
参考にした文献:
『NHKきょうの料理6』出版:日本放送出版協会 出版日:1995/6/1 p15.16
『NHKきょうの料理6』出版:日本放送出版協会 出版日:1992/6/1 p8-10
農産物の上手な利用法(ラッキョウの下漬/作り方) 神奈川県ホームページ
らっきょう漬けの基本! ポリ袋で漬ける「塩漬け」 | 丸ごと小泉武夫 食マガジン
ヨーグルトの乳酸菌は死んでも効果があるの? 一般社団法人日本乳業協会