お隣の空き家から、コロコロ転がってくるのは梅。
いつも「もったいないなあ」と見ているばかりだったけど、今年は許可をもらって収穫し、梅干しを作ってみた。
キズに打ち身、黒いブツブツは病気かな、色も形もてんでばらばらの不細工な梅。
「こんなので作れるのか」という興味半分、「手をかけて失敗はイヤだな」という不安半分。
でも、昔の人は買った梅なんかないんだから。
やってみたらちゃんと梅干しができた。包丁でがっつりえぐった梅でさえ。
捨てるはずのモノを食べ物に変えられた。自分の欲でやったのに、なんだか地球にいいことをした気分。世界中で食べ物が全然足りてないと言うから・・・
例年どおり3種類の梅干しを作ってみた。傷梅でも簡単にできるモノと、傷梅だとちょっと厳しいモノがあるということがわかった。そんな気付きについて。
傷梅がもったいない
お隣に住んでいたのはご高齢のおばあさん。ある日息子さんが連れて行って、空き家になった。
そこの梅の古木、毎年たくさん実をつける。熟した実はポトリ、コロコロ坂道を転がりうちの前でたまる。そして、それを掃除するのは夫の仕事。
梅を買うのは意外にストレス
みんな忙しくて「梅仕事」に興味がないのかもしれない。近頃、梅は高級品。昔は350円で普通の「梅」が買えたのに、今じゃ高級「南高梅」しか売ってない。
安く手に入れるために手作りしてるのに、却ってお金がかかるようになってしまった。
梅の時期は短く、『良い梅を安く手に入れる』ためにかなりの努力を強いられる。自分のペースを乱される感じがしてプチストレス。
梅を収穫した
6月前半に青梅を4kg買い、後半、梅干し用の完熟梅を買いに出かけようとしたら、隣家の梅が転がっていた。
「これ貰ったらどうだろう」
いつも道に落ちた梅を掃除しているわけで、早めに掃除したと思えば・・・
早速、空き家を管理している町内会長にOKを貰い、脚立と高枝切りばさみと大きなザルを抱えて隣家へ。拾ったり、切り取ったり、合計7kg収穫した。
とは言え、ほとんど傷梅。
黒い点々は、ネットで見れば「黒星病」「スス病」というカビの一種。食べても問題はないと書いてあった。無農薬の証だとも。
半分使えれば御の字だろう。
かつて義母が庭で取れた梅を送りつけて来たことがある。梅ジュースにでもと。あれもこんな梅だった。あまりに不細工な梅にがっかりした。
あの頃は「手をかけるんだから、ちゃんとした梅で作りたい」そう思っていた。
今はもったいないが先。
傷梅で梅干しを作る
今年の「梅仕事」、残すは梅干しばかり。
傷梅の悲哀、追熟すれば傷が広がり、黒ずんでくる。急がないと。
傷梅ぜんぶ梅干し成功
いつもの3種類の梅干し(10%減塩梅干し・さしす梅干し・甘い梅干し)を作ってみた。
それぞれの梅干しの作り方についてはこちら↓
10%減塩と甘い梅干しはジップロックを使っている、いざとなれば冷蔵庫保存するつもり。さしすは果実酒のビンだから、敗者復活はなし。
《さしす梅干し》
梅をドボンと酢の調合液に漬けこんだ。液は濁って見えるけど、これは切り口の実がモヤモヤと漂っているだけ。だと思う。
《10%減塩梅干し》
こちらも10%の塩+焼酎に漬けこんだ。梅酢もこのとおり透き通っていて全くいつも通り。
大部分の菌は10%の塩分で生育が止まる、というがその通り。
《甘い梅干し》
5%の塩+10%の氷砂糖に漬けたものだけ、ちょっとヤバい・・・日が経つにつれ、液の不透明っぽさや泡が気になる。
気が気じゃないので冷蔵庫の野菜室に移動。それ以降変化なし。
こうやって1か月経ち、その後ザルの上で天日干しをした。
傷梅の梅干しの考察
●漬ける塩分がカギ
痛み具合で漬け方を変えている。痛みの大きいものは、腐敗しにくいと思う「さしす」。きれいなモノは「甘い梅干し」、中間は「10%梅干し」。
傷み大 さしす>10%>甘い梅干し 傷み小
結果、全部ちゃんと梅干しになった。とは言え、甘い梅干しはちょっと危なかった・・・早いうちに気が付いたから難を逃れられたけど。
傷梅はデリケート。バイ菌だって多いはず。塩分の少ない漬け方はしない方が賢明。
●ザルにくっつきやすい
もともと破れ梅状態なので、ザルにべっとりくっついて、引っ張りはがすのが大変。とくにくっつく切り口は、まず上にして干すべき。オーブンペーパーに乗せるのもありかも。
実が薄い分、乾きも早かった。
●美味しいけど人にはあげられない
梅干しになっても、傷梅はやっぱり傷梅。見栄えは改善されない。
出所のはっきりした無農薬の梅という付加はあるし、種が大きくねっとりとした食感も悪くない。
でも、梅も見栄えが大事。人に上げるにはちょっと・・・
左から『さしす』『10%』『甘い梅干し』。
ちょうど、北野天満宮の大福梅を友人に貰った。境内にある1500本の梅の木から採れた梅で作るのだとか。しっかり塩をきかせ、カラッカラに干し上げている。
大小不揃いで種が大きくしわくちゃ。よくみれば黒いブツブツもある。
こんな素朴な梅干しが、たまらなくかわいくみえるようになった。
まとめ
これまで、梅干しはキレイな梅で作るものだった。
ちゃんとした梅じゃなくても、ちゃんとした梅干しが出来るとわかった。
なにより、捨てられる梅を救済できたことがホントにうれしい。
参考資料:
食品加工 ・貯蔵 におけ る塩 の機 能 と役割